理念と経験 2019 1 1

「経済は生き物である」
 私は、FRB議長のパウエル氏の「采配」について、
少し心配していることがあります。
パウエル氏が法律家であるからです。
 法律を学んだ人の特徴として、
「こうでなければならない」、
「こうあるべきである」という理念的な思考があります。
 よく言えば、理想を掲げて社会を建設していくということでしょう。
悪く言えば、臨機応変でないということでしょう。
 これは、元議長のバーナンキ氏とパウエル氏を比較すれば、
よくわかるでしょう。
 バーナンキ氏は、時には大胆に行動して、
時には、繊細に行動して、
さらに金融市場に対しては、「ショーマン」だったのです。
つまり、「演出家」でもあったのです。
 私は、「とうてい学者には見えない」と思ったものでした。
バーナンキ氏は、「経済は生き物である」と考えていたのでしょう。
 たとえば、小売業では、こんな話を聞いたことがあります。
「この商品が売れ始めた。
だから大量に仕入れた。
しかし、仕入れた途端、客足が止まった」
「インターネットに店を開いた。
これは売れる商品だと思って、
大きく掲示しておいたのに全く売れない。
しかし、客は、ショッピング・サイトを下へスクロールして、
サイトの一番下に掲示してある商品を買った」
 喉が渇いていない馬に対して水を飲ませるのは不可能なように、
客に対して、「これを買うべきである」とか、
「これを買うのが正しい」と理念的に考えるべきではありません。
 そういう文脈で考えていくと、
意外にも、理系は、小売業に向いているかもしれません。
 文系は、教室で、ひたすら理念的なことを学ぶのに対して、
理系は、「実験」が必須となっています。
 完璧に準備して、教科書通りやったのに、
想定外の実験結果が出てしまった。
 理系は、そういう経験があるでしょう。
経済も、「生き物」であるので、想定外の連続です。
 さて、新聞の経済面には、
英国のEU(欧州連合)離脱の記事が多くあります。
 記事では、英国の混乱を予想することが多いですが、
EUの弱体化も予想できるでしょう。
 ドイツは、偉大な哲学者を輩出しました。
カントやヘーゲルという世界史に残る哲学者たちです。
 しかし、経済は「生き物」です。
何が起こるかわからないうえに、想定外の連続です。
 パウエル氏の理念が正しかったのか、
トランプ氏の経験と直感が正しかったのか、
それは、経済史の専門家の筆を待つしかありません。









































































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